どんな考えで作っているか

polaroid

これくらいのレベルの映像をサッと作れる人がいると、重宝する。

何気なく、褒める意味で言ってくださったことかもしれなくても
言われたほうは忘れられない言葉があります。
それが、原動力にもなったりするんですが
随分前に言われたこの言葉を、時々思い出すことがあります。

サッとは、作っていません。
サッとは、できません。
これくらいのレベルって、どういう意味でしょう。

夫婦二人体制でやりだして、私も現場に行くようになって分かってきましたが
何気ない姿を捉えている映像ほど、撮られる側に違和感を持たれないように
気配を消し、邪魔をせず、でも必要な時には語りかけ
そんなに必要なの?と思われるくらい、長い時間をかけて撮影しています。

カメラマンがいる、という「通常とは違う状態」を
撮られる側も必ず意識されています。
どこの誰に見られるか分からないので、怖い、嫌だなと感じて当然です。
インタビューをしていて、とても重要な話をされている場面で
「こんな話はここだけの話で、カットで」と言われることもあります。

かつて、夫が撮影編集したもので
「使われると思っていなかったから話せたことだったのに」と指摘され
話し合いをすることになった経験があります。
今では、配慮が足りなかったその経験が
インタビューや密着撮影の際の大きな指針となっています。

そういう試行錯誤の積み重ねで撮影した素材の中から
どの部分を一番お伝えすべきか
映像に残しておくべきか
依頼者の意向を汲みながら進める編集の時間は、とても根気がいります。

と言っても私は編集の技術はなく、インタビュー場面の抜粋くらいしかできないので
夫からは「分かったように言うな」と言われてしまうかもしれませんが
横で見ていて感じています。

ただ、技術のない私だからこそ、最初の視聴者として何を思うか
率直に意見します。
その過程でぶつかることもあり、夜中に怒鳴りあいになったりもします。
よく「ええっ、穏やかなお二人が?」と驚かれますが
バチバチ戦っています。人に見せられない一面です(苦笑)。

先日、言い合いの果てに夫が言ったことにハッとしました。
「死に物狂いでやって、やっと出来上がるんだよ!」

普段は人前で雄弁に語ることのない夫ですが
撮影現場で感じた被写体の魅力、その場面の特徴など
「これは本当に伝えたいことか」「綺麗ごとに映らないか」
「未来の被写体や関係者や自分が見ても、恥ずかしくないか」
自問自答しながら時間をかけて作り上げています。

そういう仕事への姿勢を
のろけではなく冷静に、仕事仲間として知ってもらいたいなと思い
今日は長々と書いています。

時には疲弊することもある我々ですが、何がモチベーションかというと
一つは、それぞれの仕事や人生を全うされている方に
お仕事を通じて出会えることです。
この仕事を受けていなかったら
その人の何気ない考えやこだわりを知りえなかった
そんな場面に出会うと、何とも言えない有難さを感じます。

そして二つ目は
自分たちの「心が動いた瞬間」を、他の方にもどう伝えられるのか
悩んで完成したものが、伝わっているな、と感じられる時です。
褒められると何とリアクションしていいか
いつも困り顔になってしまうのですが
後から後から喜びを感じています。

そして、今すぐのリアクションではなくても
時を経て何かのきっかけで映像を見てくださった方が
少しでも映像に何かを感じてくだされば…
そんな光景を思い浮かべながら
日々精進で、続けていきたいと思っています。

※冒頭のポラロイド写真は、ある撮影の被写体だった方が
「撮影者を撮影しよう」と、鞄から取り出し撮ってくださったものです。

記録係:川口鑑子


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。